パリ国際サロン/ドローイング・版画コンクール 報告

2023年 第36回パリ国際サロン報告

明るく開放的な会場をバリエーション豊かな200点超の作品が彩った

本展の象徴となる赤と黒の旗が今年もパリの街に掲げられた

人々で賑わうヴォージュ広場のアーケード下にあるギャラリー・デュ・マレ

2月9日(木)、朝方、空に薄くかかっていた雲も昼過ぎには青空へと変わり、まるで「第36回パリ国際サロン」の幕開けを祝うかのように太陽が顔をのぞかせた。パリ3区マレ地区は、すっかりコロナ以前の日常を取り戻し、通りを行き交う人々で賑わいをみせていた。
展覧会概要
第36回パリ国際サロン2023
会期:2023年 2月 9日(木)~12日(日)
会場:パリ市3区 エスパス・コミンヌ
         ギャラリー・デュ・マレ

日差しの差し込む明るい会場

13時、赤と黒を基調とした看板が掲げられた第一会場エスパス・コミンヌ会場には、開場するや否や次々と来場者が訪れた。同日18時からのベルニサージュを前に、本サロン会長ジャン・マリ・ザッキ氏、副会長エルベ ロワリエ氏に加え、フランスを代表するサロンの重鎮ら本展関係者も続々と来場。36回を迎える本展を彩る213点をじっくりと鑑賞しながら、各々の意見を熱く交わし、ベルニサージュの始まりを待っていた。開始予定時刻を迎えた頃には、会場は賑わいをみせ、本展の開催を心待ちにしていた美術関係者や愛好家の熱気に既に包まれていた。
  • 13時の開場から続々と来場者が訪れた

仏画壇関係者、来場者と共に開催を祝う「ベルニサージュ」

ベルニサージュ当日は約100名の来場者が集い開催を祝した

ザッキ氏のスピーチを契機に始まったベルニサージュでは、本展を主催する欧州美術クラブ代表 馬郡 文平からのメッセージが披露された後、仏美術雑誌ユニベール・デザールに掲載された本展紹介記事の全文が、執筆者でもあり本展審査員の一人でもある同雑誌編集主幹のジョセ ディボ氏により披露された。(記事全文は下記参照)
ザッキ氏は「この記事はまさに本展を象徴する」と来場者に紹介し、本展副会長エルベ ロワリエ氏の挨拶の後、サロン・ドトーヌ会長ルグラン ドゥニ氏、フランス芸術家協会(ル・サロン)会長マドレーヌ ブルノー氏からも本展開催の祝辞を賜った。ご挨拶の中では皆、今日ここに集まった126名の日本作家による作品の質の高さを称え、日本から来場した2名のアーティストへの感謝の言葉が述べられた。ザッキ氏の音頭で日本語の「カンパイ!」の声が会場内に響くと、そこかしこで、熱心な会話や交流が始まった。この日エスパス・コミンヌには約100名が来場し、作品に対する解釈や本展から受けたインスピレーションなど、閉場間際まで話が尽きることはなかった。
  • サロン・ドトーヌ協会 ルグラン ドゥニ会長

  • フランス芸術家協会 マドレーヌ ブルノ―会長

第二会場 ギャラリー・デュ・マレ

パリで最古のヴォージュ広場に面したギャラリー・デュ・マレ会場

翌日に催されたギャラリー・デュ・マレでのベルニサージュ第2夜にも、サロン・ドトーヌ副会長スナイデル ローズ氏をはじめ仏画壇関係者やギャラリーの関係者が来場。和やかな雰囲気の中でも、ギャラリー代表ポール・フランス・ルチアニ氏、マネージャー シリル・バタイユ氏と共に、作品を前に真剣な表情で語り合う常連客の姿も見られた。「パリ最古の広場」として知られるヴォージュ広場に面した歴史ある回廊に位置する本ギャラリーの前には、ウィンドウから見える作品に目を止め、立ち止まって意見を交わすカップルや家族連れの姿も多く見られた。
  • 春の日差しを求めて多くの人が行き交う

  • ギャラリー・デュ・マレ代表
    ポール・フランス・ルチアニ氏

  • ギャラリー・デュ・マレ
    シリル・バタイユ氏

アートを介した日仏芸術交流
懸念されていたストライキの影響も少なく、本展は無事最終日の12日(日)を迎えた。今回、とても印象に残ったことは、会場を後にする来場者の多くが、スタッフに声をかけてくれたことである。本サロンの感想とともに次の展覧会の予定を尋ね、「次回も楽しみにしています」との言葉を残して会場を後にする方も多く、また、販売価格に関する問い合わせも終日絶えることがなかった。パリ、そしてフランスにおける日本作家作品への期待度の高さを改めて実感することとなった。
また、日本よりも早くマスクを脱いだフランスでは、多種多様な作品に囲まれながらアートを通じた対話を楽しむ来場者の笑顔をたくさん見ることができた。
パリ国際サロン会長 ジャン・マリ・ザッキ氏によるスピーチ
このたびは、パリ国際サロンのベルニサージュにお越しいただき、ありがとうございます。
交通機関が不安定な時期にも関わらず、こうして、沢山の皆さんの熱気に迎えられ、今年で36回を迎える本展の開催を祝うことができ、とても嬉しく思います。

今年は日本のアーティストによる213点の作品が、本展を彩りました。
本日、はるばる日本からご来場いただいた作家の方もいらっしゃいます。また、残念ながら来場が叶わなかった作家の方々も、それぞれが渾身の作品を発表しています。ぜひ、作品を通して、日本のアーティストの皆さんとの交流を楽しんでください。

本サロンの扉はアートを愛する全ての人に開かれています。かつての浮世絵との相互発展のように、
フランス、そして日本、それぞれに新たな風を吹き込むサロンでありたいと願っています。
そして、その相互関係がもたらす刺激が、今後のアート界の発展に貢献するであろうことを確信しています。

欧州美術クラブ/JIASは、長年にわたりアートを介した交流の機会を創出し続けています。
今日ここには、フランスの画壇を担う美術協会、サロン・ドトーヌとル・サロンの会長、役員の方々が揃っています。ここに来場いただいた方の中には、国立新美術館(東京)で毎年8月に開催される「日本・フランス現代美術世界展」に出品経験のある方もいらっしゃるでしょう。さらに、来る5月にはパリのバスチーユ地区で新たな展覧会を予定しています。

あらためて、馬郡 俊文氏はじめ本サロン創立に尽力された関係者の皆さまに敬意を表するとともに、志を引き継ぎ、積極的に活動を続ける欧美/JIASスタッフ、そして出品を続ける日本作家の皆さまにお祝いと感謝を申し上げます。

来年も本サロンでお会いできること願って、「カンパイ」!
ジョセ ティボ氏による展覧会総評
(ユニベール・デザール210号掲載)
決意をもって継続する勇気こそ本展が常に存在感を示す所以である
芸術サロンの役割とは、共通の憧れを抱くもの同士の交流や出会いを促進することである。あらゆるアートイベントにおいて、この芸術サロンの持つ特異性が、良くも悪くも商業的、観念的思想によって消し去られつつある今日の状況下において、本展が芸術サロンの担う本来の役割を想起させることに貢献しているのは明らかである。パリ国際サロンに参加している日本作家の作品が、36回目の今回もエスパス・コミンヌ会場を埋め尽くしている様を見れば、私たちの心の中で、出会いへの渇望と同時に、信じたいという思いがより一層強くなるだろう。

36年前、日本のアートプロモーター馬郡 俊文氏によって始められたパリ国際サロンの歴史は、何よりもまず友情の歴史であった。文化人であり文人であり続けた一人の日本人と、2世紀にわたり芸術と思想によって作られたパリ独特の雰囲気との間の友情である。彼のアイディアは、アーティストにとって当時ヨーロッパで最も厳しいとされていた、望ましくも手強いパリの大衆の視線に、あらゆる分野の日本人アーティストがアクセスできる場を提供するという、シンプルかつ野心的なものであった。時は流れ、創設者である馬郡はもういない。しかし彼の魂は、その情熱が長年にわたり、辛抱強く積み上げてきたものの一つひとつに残されている。

創設者が抱いていた芸術と芸術家に対する尊敬の念は、息子である馬郡 文平率いる欧州美術クラブのすべてのメンバーへと引き継がれ、活動が続けられている。パリとのつながりはますます強くなり、本展は、パリ3区ヴォージュ広場で有名なギャラリー・デュ・マレとのコラボレーションを続けている。これにより、エスパス・コミンヌでの良質な展示に加え、本展が引き継ぐ情熱的なDNAとフランス現代美術の専門家の眼とを結びつけることを可能にしているのだ。
また、半世紀以上にわたり数々のフランス国内展示会や様々な公的機関と関わった経験を持つ、画家ジャン・マリ・ザッキ氏が、偉大な前任者ポール・アンビーユ(1930-2010)の後を継ぎ、その想いを醸成しながら、本展会長として積極的に活動していることもこのサロンの魅力である。

最後に、この2023年展においては、題材や技法の選択における日本人の的確な感覚と、確実且つ、ヨーロッパの人々の目には新鮮な美的知性を持つ日本のアーティストたちが、それぞれの方法で、時に抑制的な、時に率直な表現によって常にバランスのとれた躍動的な表現を用い、芸術の本質に迫るヴィジョンを展開している。それこそが、本展の持つ重要性が日々高まっている所以であることを述べておきたい。200点以上の個性あふれる作品が一堂に会したパリ国際サロンは、これまで以上にその必要性と好機を主張し、本展が今なおシンプルかつ野心的な使命を追い求め続けていることを確信させるだろう。
ジョセ ティボ  「ユニベール・デザール」編集主幹

美術誌ユニベール・デザール(1994年創刊)の共同創始者兼編集者
1994年創刊の美術誌ユニベール・デザール誌パトリス・ド・ラ・ぺリエール編集長の右腕として長年にわたり編集主幹として活躍。日々、活きたアートに接し培われた確かな目を持ち、今回展においては、ミニ個展部門の個人講評を執筆、2021年からは審査員も務めている。
第36回パリ国際サロン 受賞作品
受賞者発表は「第36回パリ国際サロン 受賞者一覧」をご覧ください
審査風景
その他の展示風景
本展公式Facebookアルバムにて、全ての展示風景を掲載しています。

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