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受賞者インタビュー

第35回パリ国際サロン 大賞:渡部 昇
2022年4月14日(木)~17日(日)パリ市3区マレ地区 エスパス・コミンヌ/ギャラリー・デュ・マレにて開催された「第35回パリ国際サロン」大賞の受賞インタビューです。
大賞インタビュー
旅に出た際、街の裏通りを歩きながら気になるシーンがあればカメラを向け、シャッターを切ります。カラーで記録した写真を全て<モノクロ>で見直すと、体感した街の<音>と作品のモチーフとなる場面が浮かび上がってきます
「Street that smokes in the rain」 ダンボールにアクリル絵画 72.8×103㎝
  • パリ国際サロン展示風景

受賞者インタビュー 第35回パリ国際サロン 大賞:渡部 昇
大賞受賞についてお聞かせください

初めてダンボールにアクリルで表現してみたのは20年以上前の事で、その時は思ったような表現に至らず、一旦、放置。数年前、「パリ国際サロン」を知り、またダンボールで表現しようと出品を決めました。その際、上紙を剥がすアイデアを思いつきました。その作品が「優秀賞」を授賞したのを機に、現在に至り、ダンボール絵画に専念しています。今回、コンセプトやテーマはそのままにモチーフを<パリの街>とし、制作にあたりました。その作品が「大賞」を受賞できたのは、本当に嬉しいです。
テーマやモチーフはどのように決めていますか?

以前から<音>を視覚的に表現する事がテーマで、試行錯誤しましたが、ダンボールで制作するようになり、やっとイメージが表現できるようになったと思います。<音>とは、私の中ではジャズはもちろんですが、都会の街並みや空気感、喧騒や静寂も含み、ストーリーやドラマを感ずることのできる作品の意でもあります。
ジャズのジャケット写真などでも知られる写真家ウィリアム・クラクストン、ニューヨークの摩天楼などを撮り続けたベラニス・アボット、画家のエドワード・ホッパーなどの影響を受けているのかもしれません。旅に出た際、いわゆる観光写真のようなモチーフにはあまり興味がなく、街の裏通りを歩きながら気になるシーンがあればカメラを向け、シャッターを切ります。後に、カラーで記録した写真を全て<モノクロ>で見直すと、体感した街の<音>と作品のモチーフとなる場面が浮かび上がってきます。3年前、「パリ国際サロン<ミニ個展部門>」に出品した際、初めてパリを訪れました。今回の作品は、その時のパリでの取材がベースになっています。
  • 「 Cafe terrace 」103.0×72.8

  • 「 2 am 」 103.0×72.8

制作時の工夫や気をつけている点はありますか?

イメージに合う写真から数点をチョイスし、ダンボールの波の方向を考慮して、イメージに近づくまで、角度を変えたり、トリミングしたりして全体のレイアウトを決めています。作品によっては、部分的に方向の違うダンボールをコラージュしています。線画で下書きを終えたら、上紙を剥がし、ブラックの濃淡で着色、最後にホワイトを入れます。ホワイトを入れることで作品がビシッと締まるので、ダンボールの方向と同様、とても気をつけています。以前、カラーで描いたことがありますが、イメージ通りの表現にならなかったので、それ以降、モノクロ表現に拘っています。ただ、単一な表現にならないよう、特に構図や間の取り方、光と影を意識して制作しています。これまでニューヨークの街並みや地下鉄を描いていましたが、ダンボールの色合いが意外にもパリの街並みにもしっくり溶け込んだのには自分でも驚きで、今後の創作枠が拡がりました。

私は作品の中に人物を登場させませんが、惹かれた街中の広告、看板、お店や道端のサインをクセントとして採り入れる事で、無機質な建造物にもドラマ性や人間味を感じられるのではないかと思っています。今回の大賞受賞作品は、雨の中、エッフェル塔のあるシチュエーションを探して歩いていた時にたまたま出会った風景がベースになっています。アクセントとしたのはカクテルか何かの広告看板。看板内の広告は回転式だったので、ずぶ濡れになりながら気に入る広告表示を待って撮影しました。
制作場所や時間など、決まった創作スタイルはありますか?

製作する部屋ができたので、ここ数ヶ月、仕事が休みの時は、朝から晩までほとんど引きこもって制作しています。現在、来年(2023年)の「パリ国際サロン<ミニ個展部門>」に向け、4点を同時に制作しています。
数年前から複数点を同時並行で制作するスタイルをとっています。1点に集中するより、複数点を同時制作することで閃きが生まれます。黒の濃淡表現が多い事もあるのですが、これだ!と思う濃淡色をそれぞれの作品に活かすなど、流れ作業のようなスタイルです。ある種の効率化でもありますね(笑)。
今後の抱負などあればお聞かせください

この度の大賞受賞の副賞として、来年の「日本・フランス現代美術世界展」に壁面8m相当での当別展示をご招待いただきましたので、ニューヨークをテーマとした新作5~6点を製作する予定です。「パリ国際サロン」には長期的に取り組んでいきたいと思っています。作品販売を試みることができるのも魅力的です。

「 Paris subway 」72.8×103.0

仏美術誌「ユニベール・デザール」編集長 パトリス・ド・ラ・ぺリエール氏による寸評
渡部 昇は力みなぎるアーティストであることをここに示した。パリの街並みをダンボールとアクリル画で表現させたら、おそらくは、彼は第一人者である。この作家がしばしば描くアーバンな夜景には、建築的構造と繊細な表現があふれる。博物館などの歴史的建物のカフェテラスの眺望、コーヒー専門店のファサード、雨の通りに在る新聞のキオスク。これらは極めて知覚的に対象物を想起させ、容易に我々をアートの世界に誘う力を有している。一寸たりとも変わらず表現されたその場景は我々の思い出に働きかけ、既に忘れ去ったものを呼び起こす。これらの作品の魅力は、ノスタルジーと神秘の印象を創出することであり、我々に感情の創造的鮮烈さをもたらす。
私のお気に入りは「Street that smokes in the rain」。人通りのない街並み、青白い閃光が射し、あらゆることが可能に思える美しい現実世界の転写!
「大賞」受賞 主な審査評

「描写力、構図バランス、陰影、濃淡の表現、独創性に高い評価。ことさら、建築的構造と車や看板などの明暗が動きを創出する繊細な表現力が素晴らしい」

寸評は現地パリ会場にて配布の個展カタログに掲載された

略歴・プロフィール
渡部 昇 WATABE Noboru





<画歴>
2017 ART & MODEL 横浜市 ラウンドマークタワー
2017 パリ国際サロン ドローイング・版画コンクール部門出品
2019 パリ国際サロン ミニ個展部門出品
2019 フィンランド美術賞展 ミニ個展部門出品
2019 日本・フランス現代美術世界展 推薦部門出品
2020 パリ国際サロン 受賞招待出品
2020 日本・フランス現代美術世界展 受賞招待出品
2021 パリ国際サロン ミニ個展部門出品
2021 スペイン美術賞展 ミニ個展部門、推薦部門出品
2022 パリ国際サロン 受賞招待、ミニ個展部門出品

<受賞歴>
2016 三軌展 絵画部門 特別賞
2017・2018 三軌展 絵画部門 入賞
2017 パリ国際サロン 優秀賞
2019 三軌展 絵画部門 新人賞
2019 パリ国際サロン ユニベール・デザール賞
2019 日本・フランス現代美術世界展 NEPU賞
2021 パリ国際サロン ギャラリー・デュ・マレ賞
2021 日本・フランス現代美術世界展 日仏賞
2021 スペイン美術賞展 優秀賞
2022 パリ国際サロン 大賞
第35回パリ国際サロンムービー
2022年4月14日(木)~17日(日)パリ市3区 エスパス・コミンヌ/ギャラリー・デュ・マレで開催された
第35回パリ国際サロン」の模様はこちら

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